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助成対象詳細

Details

2017 研究助成プログラム Research Grant Program   [ (A)共同研究助成   ]

気象災害連鎖を生き抜くオセアニア環礁社会の戦略―アトール・レジリエンス解明に挑む―
Exploring "Atoll Resilience": Strategy of the oceanic atoll to survive weather disaster chain

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

オセアニアの貿易風帯に点在するアトールでは近年、気象イベントの激烈化が喫緊の問題になっている。これを踏まえて本研究では、クック諸島北部のアトール社会プカプカを事例に、2005年の巨大サイクロン・パーシーの被災から復興に至るまでの回復戦略を文理協働の統合的手法によって解明し、「アトール・レジリエンス」モデルを構築・提唱することをその目的とする。具体的には、居住空間の核にある①主食であるタロイモ等を栽培する不被圧淡水層を利用した天水田、②主食である魚類を日常的に獲るラグーン、③コミュニティの中心に位置し親族・村落を横断する関係性の原理となる墓域、に着目する。そして、聞き取り調査および参与観察によって主に資源の管理・分配のための組織・制度を明らかにする「文化人類学班」と発掘調査や地形測量等で景観史を紐解く「ジオアーケオロジー班」に分かれて、現地調査を軸とした研究を進める。最終的に、「手の込んだ」組織・制度の有効性と「手をかけた」景観の現在的な価値を「アトール・レジリエンス」モデルとして統合的に評価し、小島嶼社会の維持・発展に向けた適応策を考え、成果を広く現地、島嶼国、一般社会に対し発信する。
 Extreme weather events have become severe and urgent issues for the Oceanian atolls located in the trade wind belt recently. With this in mind, the purpose of our project is to reconstruct the resilient process in which Pukapuka, the northern atoll society in Cook Islands, has been recovering from the devastating damages by Cyclone Percy in 2005 through the inter-disciplinal integrated approach, and to construct and advocate the "Atoll Resilience" model. More practically, as the base of the residents' everyday life, we will focus on three living spaces: (1) paddy fields above groundwater lens where they cultivate taro, (2) lagoon where they daily catch fishes, and (3) graveyards that function as a principle to connect the people from different kinships or villages. Here, the cultural anthropological team will explore an aspect of organization and system particularly regarding to maintenance and distribution of the resources by participate observations and interviews. On the other hand, the geo-archeological team will analyze an aspect of landscape history by excavations and topographic surveys. Finally we will assess both efficacy of "elaborate" organization and system and value of "elaborate" landscape, and consider "Atoll Resilience" model to contribute to conservation and development of the small island societies. We will present these outcomes of the project not only to the local community but also to the other island countries and the general public.
 

実施報告書・概要

Summary of Final Report

オセアニアの貿易風帯に点在する環礁では近年、地球温暖化に起因する気象イベントの激烈化が問題になっている。これを踏まえて、クック諸島北部の環礁社会プカプカを事例に、2005年の巨大サイクロンの被災から復興に至るまでの実態を捉え、「アトール・レジリエンス」を明らかにすることを目的に研究を実施した。より具体的には夏季現地調査において、「文化人類学班」は聞き取り調査やハンディGPSを用いた踏査、「ジオアーケオロジー班」は発掘調査や地形測量などを実施し、その結果を統合した。
 まず、災害マネジメント・サイクルでいうところの被災直後の短期的な「初動対応」の段階では、社会構造をレジリエンスの所在として指摘できる。プカプカでは、環礁、村、双系的出自集団という3レベルの社会組織が発達し、それぞれの統率機関を中心に領域や資源を管轄しているものの、平常時は村というレベルが意識される場面が多い。ところが「初動対応」に際しては、村よりむしろ環礁と双系的出自集団という社会組織が前景化し、危険度の高い住宅から危険度の低い住宅への避難、瓦礫・倒木等の撤去と整備、限られた資源の活用と分配において、有効に機能したことが確認できた。つまりサイクロン襲来に際して、多層的な社会組織を平常時の機能や「棲み分け」に固執することなく応用することによって、柔軟かつスムースな対応が可能になったと捉えられる。
 次に、被災後の長期的な「復旧・復興」の段階では、資源配置、なかでも主食を提供するタロイモ天水田の配置こそをレジリエンスの所在として指摘できる。住民は天水田を4種類に分類するが、それらはラグーンに近接する低湿地を利用した大規模天水田と、内陸の微高地を掘削した小規模天水田に大別できる。前者は環礁または村レベルで管理されており、定期的に区画再設定のうえ成員個人に割り当てられるのに対して、後者は双系的出自集団に管理されており、系譜に基づいて次世代の個人に継承される。加えて、大規模天水田はアクセス・農作業がしやすいが、サイクロンによる高波・浸水・塩害を受けやすいのに対して、小規模天水田はアクセス・農作業がしにくいが、サイクロンへの耐久性が高い。以上のような対照性は、島の地形的特徴や天水田形成・修復の歴史にも裏付けられる。さて、住民は個々に島内の多様な場所で、大規模天水田と小規模天水田双方において複数の区画を確保している。このことは一見非合理的にもみえるが、タロイモ資源に対するサイクロン被害に対して、結果的にリスクを分散し備えているものと評価できる。
 以上より、プカプカ環礁における「アトール・レジリエンス」は、その社会構造と資源配置によって構成されていると捉えられる。今後の課題としては、レジリエンスの所在としてさらに、環礁という変化する地形と環礁社会がもつ海外ネットワークを、明らかにする必要があると考えている。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2017 研究助成プログラム Research Grant Program   【(A)共同研究助成  】
助成番号(Grant Number)
D17-R-0761
題目(Project Title)
気象災害連鎖を生き抜くオセアニア環礁社会の戦略―アトール・レジリエンス解明に挑む―
Exploring "Atoll Resilience": Strategy of the oceanic atoll to survive weather disaster chain
代表者名(Representative)
深山 直子 / Naoko Fukayama
代表者所属(Organization)
首都大学東京人文社会学部
Faculty of Humanities and Social Sciences, Tokyo Metropolitan University
助成金額(Grant Amount)
3,800,000
リンク(Link)
活動地域(Area)