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助成対象詳細

Details

2017 研究助成プログラム Research Grant Program   [ (B)個人研究助成   ]

「野生」の価値とは何か?―北海道およびアメリカ合衆国ハワイ州における狩猟を事例に―
What is the Value of "Wild"?:Case studies of recreational hunting in Hokkaido, Japan and Hawaii, USA 

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

北海道およびアメリカ合衆国ハワイ州では、増加した、あるいは島外から導入された野生動物を、食料およびスポーツハンティングのために資源利用することが進められ、新たな価値が見いだされている。しかし、経済的に偏重した資源利用では、持続可能性を保障することは難しい。また、野生動物管理や観光振興という言葉が地域社会で咀嚼されないまま、政策的にウエから降ってきても、ガバナンスは硬化してしまう。そのため、「地域社会や住民にとって、野生動物とはなにか」という、人びとの生活実践、歴史や文化とつながった地域社会の文脈に野生動物の新たな価値を「埋め戻す」発想が必要である。
 本研究は、北海道およびアメリカ合衆国ハワイ州における狩猟を事例に、理論研究、フィールドワーク、研究成果の還元と応答の3つを柱として、「野生」の価値を実証的かつ理論的に考察し、人と野生動物の共存関係の構築と持続可能な社会の創造に資する研究成果を目指すことにある。
 The number of Hokkaido Sika deer (Cervus nippon yesoensis) in Hokkaido, Japan has been increasing. In addition, in Hawaii, USA, "wildlife", such as deer, wild pig and goat, which has not existed there, spread over the islands. As a countermeasure for human-wildlife conflict, using them as food and hunting resources have promoted. However, only the economic aspect cannot ensure the co-existence between human and the nature. Therefore, we need to consider the mean of wild or wildlife for local community from the think of Adaptive Government. 
 This study aims to consider the values of wildlife for local community, using the fieldworks in Hokkaido and Hawaii, literature research, and returning the profit to society.

実施報告書・概要

Summary of Final Report

野生動物保護が声高に訴えられ続けてきた一方で、近年、日本や一部の国では増加した野生動物と人間社会との軋轢が問題視されている。野生動物を管理する対策として、それらを食料(ジビエ)資源や、娯楽のための狩猟(スポーツハンティング)資源として利用することに注目が集まっている。こうした新たな動物資源の活用は、新たな価値が創出されたと見なすことができる。しかし、食料や狩猟のための資源利用は、経済的観点に重点が置かれており、それに偏重すると、野生動物の絶滅・激減が引き起こされかねないことは歴史が証明している。また、社会的弱者を排除し、富裕層が狩猟権を独占するという社会的不公正を招くこともある。そこで本研究では、野生動物に見いだされる新しい価値に対して、どのような視座やアプローチが必要となるかを考察するために、北海道占冠村およびアメリカ合衆国ハワイ州モロカイ島において、参与観察と半構造化インタビューを中心としたフィールドワークをおこなった。
エゾシカの個体数増加が問題視いる北海道占冠村では、村全体を有料の猟区に設定し、狩猟および狩猟者を管理する政策がとられていた。村役場は、生態学的および経済的なメリットを猟区に見出していたが、地域住民は農業被害対策が重視されていないこととともに、過去の観光開発のように猟区運営やエゾシカ管理がトップダウン的におこなわれようとしていることに対する不安が聞かれた。
現在、ハワイ州モロカイ島は多く生息しているアクシスジカは、1868年にカメハメハ5世への贈り物として持ち込まれた。5万から7万頭にまで増加したと言われるアクシスジカは、農業被害や交通事故、植生破壊を引き起こす一方で、地域住民にとって栄養的、社会的、文化的に重要な食料・狩猟資源となっていることが明らかとなった。そのため、2020年2月に、島内で自然保護活動をおこなう国際NPOがアクシスジカに対するヘリコプターからの間引きをおこなうと発表したことに対して、地域住民たちは反対集会を開いた。その場で、住民たちは、口々に、「我々のシカであり、我々が管理する」と叫んだ。この集会が象徴するように、地域住民は政府や関係団体がおこなうトップダウン型の野生動物管理に反対し、地域社会を主体としたボトムアップなものへの移行を求めていた。
以上のような結果から、野生動物に対する新たな価値が見いだされるなか、野生動物管理や観光振興、自然保護という言葉が地域社会で咀嚼されないまま、政策的にウエから降ってきても、ガバナンスは硬化してしまう事例が明らかとなった。そのため、野生動物の新たな価値を、人びとの生活実践、歴史や文化とつながった地域社会の文脈に「埋め戻す」ことと、協働のガバナンスのあり方を探らなければならないと考察された。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2017 研究助成プログラム Research Grant Program   【(B)個人研究助成  】
助成番号(Grant Number)
D17-R-0787
題目(Project Title)
「野生」の価値とは何か?―北海道およびアメリカ合衆国ハワイ州における狩猟を事例に―
What is the Value of "Wild"?:Case studies of recreational hunting in Hokkaido, Japan and Hawaii, USA 
代表者名(Representative)
安田 章人 / Akito Yasuda
代表者所属(Organization)
九州大学基幹教育院
Faculty of Arts and Science, Kyushu University
助成金額(Grant Amount)
1,400,000
リンク(Link)
活動地域(Area)