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成果物情報

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助成プログラム名 2015 イニシアティブ助成 Initiative Grants      
助成番号 Grant Number D15-PI-0003
表題 Title アジア農村研究会の回顧と展望および第23回調査実習南インド広域調査報告書
著者名 Author’s Name アジア農村研究会
原著タイトル The Original Title
編集名 Editor アジア農村研究会
出版社名 Publisher
発行年月 Publication Date 2016/10
値段(税込み) Price
ISBN

内容紹介

Description

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本プロジェクトは、狭義の職業的研究者のみでなく、実務家も含み、高い意識をもって自発的にアジアに関わる人々を「研究する市民」と概念化して、彼らが「研究する」ために方法や姿勢を学び合う場=プラットフォームを作り出すとともに、そうした人々のつながりを拡大してゆくための「市民研究プログラム」を構築することを目的とした。ここでいう「研究」とは、学問的方法論の一定の客観性を重んじながら、対象地域に真摯に向き合い、関与する姿勢をさしている。
 プラットフォームの構築については、既存のネットワーク型組織であるアジア農村研究会をそのような学び合いの場として再定義し、学会報告、公開セミナー・勉強会の開催、海外臨地調査の準備・実施、実務家を対象とした国内研修の企画・実施、ワークショップの開催などを通じて、アジア農村研究会の人的ネットワークを拡大・活性化させた。アジア農村研究会は、厳密なメンバーシップを定めておらず、「研究」についての理念をある程度共有した緩やかなつながりとして存在してきた。本プロジェクトのさまざまな行事は、こうした人材プールを活用することで、ネットワークをさらに広げるものとなった。また、ネットワークの基盤・参照点として、ウェブサイト(anoukai.com)やメーリングリストを立ち上げた。
 市民研究プログラムの構築については、まず、そうした課題を念頭に、南インド広域調査実習を準備・実施した。南インド広域調査実習とその準備過程では、当該地域を多角的に理解し、地域に特有の課題を考えるための臨地研修プログラム(7月実施)の作成を目的とした。具体的には、セミナーや勉強会を重ねて、基礎的な知識を身につけたうえで、複数人の調査団を組織して現地を実見し、改めて議論を重ね、課題を発見するというプログラムとなった。この間、南インドの地域的特性を把握するために諸分野からの知見の吸収をいかに行うか、南インドを共同調査のフィールドとした場合、どのような課題設定が可能か、という点を意識しつつ議論した。議論への参加者の多くは、専門外の研究者・大学院生や学部学生であったが、人数こそ限られていたものの、国際開発やコンサルティング、地域おこしに関わる人材の参加もあり、本プロジェクトの対象とする「研究する市民」が目に見えるかたちとなってあらわれてきた。
 「研究」をさらに「市民」へと開いていくために、10月には国際協力機構(FASID)と協力して、国際開発や地域おこしに携わる実務者を主たる対象とする「社会調査法研修」を実施した。
FASIDとの協力関係も、本プロジェクトのもとでネットワークを拡大するなか、新たに築かれたものである。この研修は、技術的な調査方法論の授業ではなく、ある地域なり社会なりを対象に調査する場合に、どのような情報をどのような方法でとるべきかを、その都度「考える/研究する」重要性を共有することを目指して実施した。研修の参加者からは、こうした趣旨に対して高い評価を得た。この研修を企画し実施するなかで、市民研究プログラムでは、「どのように研究するのか」という方法論の教授よりも、「なんのために研究するのか」という根本的な問いについて考える場や機会を提供することの方が、より重要であるとの結論に至った。こうした考えに基づき、狭義の職業的研究者のなかでも議論を深め、「研究」をより広く「市民」に開いていくために、本プロジェクトの締めくくりとして「フィールドワークを通じた世界観の形成 科学と感性の架橋 」と題するワークショップを東京と京都で開催した。
 「市民研究プログラム」については、本プロジェクトで、国内での実務者向け研修と海外での本格的調査実習という組み合わせが市民研究プログラムの一つのモデルとなる可能性が生まれた。実務者向け研修の企画・実施を通じて、「研究」入門書の執筆の具体的な展望も得られた。しかし、今後いっそうの、個別プログラムの企画・実施という実践の積み重ねが必要である。入門書の出版や実践の積み重ねによって、「研究する市民」のコミュニティの拡大と活性化を図り続けることが今後の課題となる。また、「研究する市民」のためのプラットフォーム作りについては、アジア農村研究会の再定義と活性化を行ったものの、恒常的な事務局や規約をもつ別組織への改組は行わなかった。これは、拘束性の少ない緩やかなネットワークという性質を維持するという点では有用だが、組織の存在の持続性という点では短所にもなりうる。実践の積み重ねは、組織の存続についてもきわめて重要である。